プレマ基金では福島県二本松市「NPO ゆうきの里 東和ふるさとづくり協議会」にドイツのBerthold Technologies社製ベクレルモニター「LB200」(2011年6月)、ベラルーシのATOMTEX社製NaIシンチレーター測定器「AT1320A」(2011年12月)を支援させていただきました。
当初は納品が比較的早いとされるBertholdTechnologies社のLB2045を早急に支援する予定でしたが、メーカーの日本法人が開示しているスペック(測定限界値等の性能)に疑念が生じ、CRMS(市民放射能測定所)などのクレームに明確な回答がなかったため、LB2045はキャンセルをしました。
弊社では3.11の東日本大震災後、プレマ基金を設立。皆様から多くのご支援をいただき、福島へ向かったのが4月上旬でした。福島第一原発の事故が、地元の農家さんを苦しめていました。その現実を私たちは目のあたりにすることになります。
「福島の農産・畜産は危ない」「放射能に汚染されている」実態が正確に掴めない状況と政府や自治体の曖昧な対応は国民の不安をあおり、福島の畜産農家は死活問題になるまで追い込まれていました。
多くの企業は契約していた農家から手を引き、原発事故前の農産物の冷凍品までキャンセルされる始末。途方に暮れる農家・・・その道理のいかない現実に、福島はじめ東北圏に既存直接取引のほとんどない私たちにできることは、原発事故前の農産物を支援として買うことぐらいしかありませんでした。そこで平成22年産の冷凍桑の実を2トン、ゆうきの里の契約農家さんから一括購入することにしました。
私たちの決断から農家さんたちは奮起、放射能が農産物に与える影響など実体を知り、対策を考えたい。という気持ちに応え、まず自分たちが使うために携帯していた高性能のガイガーカウンタ(線量計)を2台お貸しました。
驚くことに彼らはその2台のガイガーカウンタで、毎日80箇所以上にもおよぶ農地の計測をはじめたのです。福島県二本松市の会員の農地を中心に、東西南北、高低差による線量の違いをデータ収集し、農地の条件で線量が変わるという傾向が見えるようになってきたのです。
たったの2台の線量計で毎日欠かさず計測する姿勢に心を打たれました。
彼らの取り組みに、いまどん底の状況から復活する福島の農業の未来を期待したい!そんな想いから次の支援へと繋がっています。
「自分たちの作った野菜は本当に危険なのか?」農家さんのそんな疑問に応えるべく、まず概算線量を計測できるベクレルモニター「LB200」を支援。この「LB200」は自社用に2011年3月時点で発注していたものでしたが、無農薬加工品販売を中心とする弊社では収穫前の夏時点で急を要するものではないと判断し、自社用をプレマ基金での緊急支援に差し替えました。必要のない失望や自殺をこれ以上増やしてはならないという判断でした。さらに8月に追加発注していた核種別に食品の放射線量を調べることのできるNaIシンチレーター測定器「AT1320A」が12月になってやっと納品され、無事支援することができました。
さらに、プレマ基金では東京に設立されるCRMS(市民放射能測定所)東京支所(下北沢)にも「AT1320A」を支援しました(2011年12月)。この測定所では大手企業の一般食品を中心に検査を行い、日本の食全体の安全性確立のために役立つものと期待しています。
産地より数値、福島からの贈りもの
福島にスタッフを常駐させ、取材と支援を続け数ヶ月(この取材と支援の模様は>>こちら から動画や記事でお読みいただくことができます)、瞬く間に「ゆうきの里」における測定の取り組みがTV等各メディアで話題になり、復興への一筋の光として多くのメディアに取り上げられるようになりました。
そんな中、ゆうきの里事務局の海老沢誠さんが大阪から「Iターン」で福島に惚れ込んで移住、そして農業の道に入った経緯と人を取材したいとのことでMBSのTVクルーと一緒に、京都にあるプレマ基金に訪問してくださいました。この際、おみやげに福島産の野菜をたくさん頂きました。
「えっ、福島産の野菜?」「こどもに食べさせるのか?」「TVショーのヤラセか?」 などという声が聞こえてきそうですが、自分たちが支援することのできた測定器によって数字が確認されていることを前提にすぐに料理して食べました。
私たちは基本的に『産地より数値』と考えています。原発事故に基因する放射性物質の拡散は非常に複雑な要素で構成されており、単に産地や方向だけでは何も知ることが出来ないと考えているからです。プレマ基金では福島の心ある農家さんの「自分の孫に食べさせられないものは売れない、だからこそ正確で迅速な測定をしたい。そのために有機や無農薬で長年土作りに汗水を流してきた。」という心からの声こそ真実と考え、有機や無農薬を志してきた農家さんたちに利用していただけるよう。
ガイガーカウンタ数十台や、すでにご紹介してきた食品用ベクレルモニターなど支援してきました。
遠くの産地で、農薬や化学肥料を大量に用いられてきた農産物のほうが重宝がられる風潮に一石を投じたいと考えています。農薬や化学肥料を用いることは、社会構造の複雑さはあるにせよ、最終的に生産者にゆだねられています。いっぽう、原発事故の有無は一生産者では選び取ることができません。ずっと以前から「農薬や化学肥料を使いたくない、それが子や孫によりよい環境と安全な食品を残すことになるのだから」という決断をしてきた人たちこそ、その労が報われるべきだと考えているからです。
農家さんは自分たちが口にするものを自分たちで放射線量測定するなどということはかつてありませんでした。測定は消費者のためでもあり、自分たちの信念を守り通すためでもあります。福島県は日本で3番目に広い面積をもつ県です。「福島県産=すべての畜・農産物が汚染されているという訳ではない」ということを表明できるのは、測定によってのみです。福島を中心に支援を続けてきましたが、これは福島だけに留まらず全国で測定によって実体認識し、『産地より数値』という認識こそが今必要とされることでであり、『農薬や化学肥料まみれの遠方産の方が安全』と簡単に結論づけるわけにはいかないのです。
「産地より数値」、そしてプレマ㈱で取り組む
プレマ基金としての支援とは別に、プレマ株式会社としてもATOMTEX社製NaIシンチレーター測定器「AT1320A」を購入し、京都オフィス1Fに設置(2011年12月)しました。
先だってプレマ基金からCRMS(市民放射能測定所)東京支所へ「AT1320A」を支援いたしましたCRMS理事でオペレーターも務める岩田渉さんに福島より来社いただき、スタッフ全員で放射線測定に関する指導とレクチャーをを受けました。食品を扱う会社として、またプレマのミッション&ヴィジョンでもある「あなたの大切に思う人を・・・」に沿って正確な測定ができるようにするためです。
「自分の大切な人に食べさせられないものをお客様には薦められない」 そんな思いでスタッフ一同が取り組んでおります。
今後、国内産の自社商品を優先に、自社測定と結果表示をおこなってまいります。またメーカー様や問屋様によってガイドラインや測定値が順次整理されてきており、これに沿って表示する場合もあります。必要と考えられる際には、抜き打ちで自社測定する場合も想定しています。さらに、夜などの空き時間を使い、公共性の高い検体(給食等)を無償で持ち込み測定(予約制)できるように、準備を進めています。