2011年3月11日より約1年と4ヶ月が経った7月、震災後はじめて、福島を訪れる機会を得ました。9月には東京にて、福島支援シンポジウムを開催しました。プレマ基金を通じてご縁を結んだ方々のお話のなかから、今回のレポートでは特に農の分野に関して、1年が過ぎた今だからこそ起こっている事態や現状お伝えしたいと思います。何かしたい、そう想ってくださっている方々のご参考となれば幸いです。
福島県二本松市にある二本松農園。プレマ基金の活動でもご紹介したことのある、ご縁の深い場所のひとつです。農園を営む齊藤登さんは、NPO法人福島県有機農業ネットワークの事務局長でもあります。訪れたこの日は、理事長である菅野正寿さんにもお話を聞くことができました。菅野さんは3.11震災後、農業に加え執筆や講演などの活動を積極的にこなされています。
2012年9月26日(水)にプレマ基金主催の「それでもなお、前を向く。」
~生命のリレーでつながる新しい福島、人と自然が語るほんとうのこと。~で、ご講義いただきました。
お二人によると、支援の気運が高まっていた昨年に比べ、今年は状況が苦しくなっており、常に心のどこかに重い気持ちがあるとのことです。正確な測定をして放射性物質が不検出であっても、福島県産というだけで避けられてしまう、数値より産地という状況が県外でも県内でも同様にあるそうです。地元の人ですら食べないものを余所の人が食べてくれるわけがない、だから本当のことを伝え、分かってもらう努力をし続けるしかないと、齊藤さんや菅野さんをはじめ、仲間の農家さんたちはさまざまに発信を続けられています。
震災以降の福島を避けるよな風潮があり、マスコミが伝えることを、そのまま受け入れ“恐怖”という偏った見方で、福島をみることしかできない方も多いかと思います。菅野さん自身のことだけ、自分の家族だけのことを考えているなら、わざわざクワをペンにもち替えての執筆や、全国で講演活動なども行なうことはないでしょう。でも真実を伝えていかなければ「福島の農家は皆、立ち直れないんだよ!河村さん。」と力説する菅野さん。彼のような全体を考えるリーダーが居なければ、農家は国の責任、保障問題だけにフォーカスしてしまい本当に自立できなくなってしまいます。一箇所で「何ベクレルでました」という報道に、「作付するな」「収穫するな」「刈った米を燃やせ」と、同じ市・地域だからという理由でいま農家を苦しめています。今後、復興は自分たちの手で行なわなければならないと福島有機農業ネットワークを立上げ福島農家全体のことを考えて行動しています。
実際に農園の様子も見せていただきました。
7月下旬、畑では主にキュウリが育てられており、その他の野菜も少しずつ種類を増やしています。苦しさの一方で、販売を待っていてくださる方の存在も確かにあるそうです。本当にこのときいただいたキュウリは絶品。ファンになる気持ちが分かります。
二本松農園では、ここにしかない畑、ここだから味わえる野菜を感じます。放射性物質が問題になる以前、農業という分野に問題がなかったわけではありません。たとえば後継者不足、農薬・化学肥料のこと、せっかく育てた野菜も安く買いたたかれ生活が難しい…そういった問題は切り離された別のことではなく、今の状況と地続きにあり、だからこそ今後の農業を変えていくためのきかっけが今にあるのかもしれません。